ロッテが6日に行った倉敷マスカットスタジアムでの全体練習中のこと。伊東勤監督が若き正捕手の田村龍弘に声を掛けた。

 「今いくつだっけ?今年23歳?俺の(試合に)出始めた歳と同じくらいだな。おまえ、2000本打てよ」


 驚き、絶句する田村。畳みかけるように「昨年100安打くらい打っただろ?95本?じゃあ無理か」と笑った。

 伊東監督といえば、黄金期の西武を支えた名捕手だ。その輝かしい功績は挙げれば切りがない。捕手では野村克也氏、森祇晶氏、古田敦也氏に次いで4人目の1500試合出場を達成。10度のベストナインに11度のゴールデングラブ賞。球宴には実に16度も出場した。通算22年間で安打数は1738。「2000安打へのこだわりはなかった」と振り返るが、やはり下位打線を打つことが多く、犠打数が305を数えることからもその難しさは分かる。

 改めて、指揮官の存在の大きさに触れた田村は「凄すぎます」と恐縮し、か細い声で「20盗塁します。超えられるのはそこしかない」と宣言した。伊東監督のシーズン最多盗塁「20」に挑もうということだ。しかしシーズン2桁盗塁を5度も記録したプライドからか「そこは抜かせない。近づいたら試合に使わないぞ!」と冗談が飛んだ。

 日本シリーズに14度出場し、8度の日本一に貢献した伊東監督。日本シリーズ通算70試合出場は歴代3位であることを自ら田村に教えると、田村は「出たいなあ」と夢舞台を思い描いた。捕手出身監督の下でプレーすることは厳しいことも多いだろうが、その分成長できることも多いはずだ。チームの命運を握る、捕手というポジション。伊東監督の記録を脅かすほどの数字を積み重ねていけば、チームが勝つ試合も増えるはずだ。

 和やかな雰囲気だったこの日の会話。しかし「俺を超えろよ」と言った指揮官の目は、本気に見えた。(記者コラム・町田 利衣)
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