プロ初の殊勲打で最下位にサヨナラだ。日本ハムの大田泰示外野手(26)が3日、ロッテ戦でプロ9年目にして初のサヨナラ打を放った。同点の9回無死満塁で、中前に運んだ。チームは6カードぶりの勝ち越しで4月5日以来28日ぶりの最下位脱出。昨年11月に巨人からトレード移籍した未完の大器が北の大地で飛躍のときを迎えようとしている。


 北海道で上がった初のお立ち台。絶景だった。プロ9年目で初のサヨナラ打を放った大田は「幸せですね」と言葉をかみしめ「初めまして、大田です。トレードで来ましたが、ファイターズの戦力になれるよう力いっぱい頑張ります」と力強くあいさつした。大歓声が心地よく、温かかった。

 同点の9回無死二、三塁、打席には田中賢。ロッテベンチは敬遠の満塁策を取った。「(敬遠)だろうなと思った。思い切っていくしかできない」。大田は覚悟を決めた。2球目、外角低めのスライダーをバットの先端で拾った。見逃せばボール球だったが「何とか前に飛ばしたかった」。打球は前進守備の二遊間を抜けた。サヨナラ打はアマチュア時代を含めて「記憶にない」と言うが、巨人時代に2軍で2度もある。そんな記憶も吹き飛ぶほど、歓喜のウオーターシャワーに酔いしれた。チームは4月5日以来の最下位脱出となり、栗山監督は「大事な場面で、気持ちを感じる打ち方だった」と称えた。

 08年にドラフト1位で東海大相模から巨人に入団。松井秀喜氏の背番号55を与えられ、大きな期待を背負ったが結果を残せず苦しんできた。「プレッシャーとの闘いもあった」と率直に話す。8年間でわずか9本塁打。未完の大器は昨年11月、日本ハムにトレード移籍した。2月の沖縄・名護キャンプでは両球団の先輩にあたり、同じ広島出身でもある張本勲氏(スポニチ本紙評論家)から声を掛けられ、感激した。「“喝”とは言われてないです。“レギュラーを獲って頑張れ”と。うれしいですよね」。巨人時代から気に掛けてもらい、打撃指導もしてくれた大先輩の温かさが胸に染みた。

 開幕直前に左脇腹痛で離脱し、4月23日の西武戦(メットライフドーム)で移籍後初出場。初打席では一塁へのヘッドスライディングで移籍後初安打となる内野安打をもぎ取った。このときベルトが切れたが、ベルトを貸してくれたのがベンチにいた矢野だった。「あいつ、意外とウエスト細いんだよ」。1メートル88、95キロの大田に対し、矢野は1メートル78、85キロと体格差はあるが、腰回りはさほど変わらない。巨人時代から知る先輩の優しさが、新天地で身に染みた。

 「これ(移籍)は転機だし、変えさせてくれるチャンスをくれたファイターズとジャイアンツに感謝しないといけない。ファイターズの一員として全てをささげる」。強い覚悟が伝わる言葉だった。 (柳原 直之)
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