井上尚は米国の試合でも日本と変わらない、理想的な戦い方ができていた。あれだけ相手に守りに入られると倒すのは難しいが、4回には足を使って自分から距離を取り、ニエベスが先に手を出すように仕向けた。打ってきたところでカウンターを狙うためだが、相手が再び守りに回った、ここからの組み立てが良かった。


 5回はまずガードの上からでも顔面を狙っていき、そこから左ボディー、アッパーを返した。最初からボディーを狙うと相手は打たれないポジションに逃げてしまうが、最初に上を打つことでボディーへの注意を減らし、返しにつなげた。ダウンを奪ったボディーは一撃で決めたものではなく、意図的に何度も叩いてダメージを蓄積させた結果だ。

 上も下も打たれたニエベスは、さらに自分から手を出せなくなった。このまま判定では勝てないし、倒す方法も見つからない。セコンドが棄権したのは、もう打つ手がなくなったからだ。

 スピードで上回り、空いている部分を正確に打ち抜き、最後は相手の心を折ってTKOに持ち込む、WBO世界スーパーフェザー級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ、世界最速記録のプロ7戦で2階級制覇達成)の試合のようだった。あと2ラウンドもやっていればKOもできていた内容で、海外デビュー戦としては大成功だと思う。

 米国でアピールするには圧倒して勝つという見せ方もある。ローマン・ゴンサレスを破ったシーサケットに対し、インタビュアーが井上の名前を挙げて対戦に興味があるか聞いていたが、ファンが見たいと思っている試合だから質問が出るのだ。井上がシーサケットやエストラーダと戦う姿を私も見たい。(元WBC世界スーパーライト級王者)
閉じる
続きを表示する