きさらぎ賞の10分後にゲートが開いた東京の「第67回東京新聞杯」でも、僚馬ブラックスピネルが逃げ切って初タイトル奪取。音無師自身2度目の1日重賞2勝を達成した。

 ライバルにきっちり借りを返した。前走・京都金杯でエアスピネルの2着に泣いたブラックスピネル。その差はわずか鼻差だけだった。エアはこの日も単勝オッズ1・8倍の1番人気。リベンジへ――気迫の伝わるようなスタートを切った。

 「凄くいいスタートだった。ペースが遅くなるとは思っていたけど、ハナ(先頭)までは考えてなかった」(M・デムーロ)

 キャリアで逃げたレースはなし。それでも初コンビの鞍上は好ダッシュを生かすべく、瞬時に“奇策”を選択した。「逃げるのは初めてだったから、ずっと物見していた」。ブラックには未知の光景が続いたが、5F通過は62秒2。息の入るペースで直線へ。後方から差し馬勢が襲いかかるが、時すでに遅し。同じ4歳馬のプロディガルサン、エアスピネルを従えてゴール板を駆け抜けた。デムーロは「返し馬から落ち着いて、レースはずっといい手応えだった」と笑顔を爆発させた。

 百戦錬磨のデムーロを「凄くいい馬。大好き!」と興奮させるほどの器。調教では先日、引退した厩舎の看板馬ミッキーアイルと互角以上の動きを見せる期待馬だった。この日の2、3着馬とは違ってクラシックへの出走はかなわなかったが、牙は研ぎ続けていた。

 ウイナーズサークルでのきさらぎ賞の表彰式中、ターフビジョンに映し出された映像でダブル重賞獲りを見た音無師は「こんなこともあるんだね。ジョッキーがうまく乗ってくれた。今後はマイラーズC(4月23日、京都)を目標に放牧に出す」と京都競馬場でコメント。モーリス、ミッキーアイルの引退で混沌(こんとん)を極めるマイル界の様相が、徐々に照らされ始めた。

 ◆ブラックスピネル 父タニノギムレット 母モルガナイト(母の父アグネスデジタル)牡4歳 栗東・音無厩舎所属 馬主・サンデーレーシング 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績14戦4勝 総獲得賞金1億4616万9000円。
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