冬のダート王決定戦はセン馬2強対決だ。鈴木康弘元調教師(72)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第34回フェブラリーS(19日、東京)ではノンコノユメ、サウンドトゥルーを満点評価した。達眼が捉えたのは両馬の著しい変化。関東勢の19年ぶり王座奪還も懸かる2頭は15日に最終追い切りを行う。

 サラブレッドは短期間でも体つきを一変させることがあります。フェブラリーS出走馬でいえば、ノンコノユメが典型でしょう。昨年12月のチャンピオンズC時はトモ(後肢)と腹周りが薄くなっていました。馬体評価も95点にとどめました。それから2カ月余、トモには見違えるほどの張りが増している。そのため、背中から腰、尻にかけて、とがっていたラインが丸みを帯びています。寂しく映った腹周りにも余裕が出てきた。ダートは腹周りで勝負する…とまでは言いませんが、腹の薄いダート馬などいません。砂の大一番を戦う上で欠かせないパーツが、たくましくなりました。

 身心一如といいます。体の変化に合わせて精神状態も変わってきました。立ち姿を見れば、尾の位置がチャンピオンズC時と違うことに気付くでしょう。昨秋は気持ちを高ぶらせて、尾と後肢の間に大きな隙間ができるほど尾の付け根を上げていました(写真参照)。今度はしっかりと下げている。落ち着きを示すしぐさです。顔つきも穏やかになった。体が充実したことで気持ちにゆとりが生まれたのです。

 心身の大きな変化は去勢が理由でしょう。昨年の夏に去勢手術を受けたと聞きました。精巣除去によるホルモン分泌量の減少で一時的に馬体がしぼんでしまうことがあるのですが、半年もたてばホルモンバランスが整って回復する。ノンコノユメもセン馬になって半年。馬体の張りを完全に取り戻したと断言します。

 それにしても、不思議な体形です。前駆はダート仕様。肩、胸前、首が分厚い。一方、後駆は芝仕様。流麗な曲線を描いてスマートです。車で言えば、前輪がスタッドレスタイヤ、後輪はスポーツタイヤ。前駆と後駆がそれぞれ別の用途でつながっているような体形です。昨年のフェブラリーS時には竜の頭と鹿の体を持つ霊獣「麒麟(きりん)」になぞらえ、100点満点を付けました。その後の去勢を経て、チャンピオンズCどころか、麒麟と書いた昨冬さえ上回る仕上がり。短期間に体つきを一変させたサラブレッドです。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93〜03年には日本調教師会会長を務めた。引退した15年にはスポーツ功労者・文部科学大臣顕彰受賞。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズなどで27勝。
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