豊洲市場の移転問題を検討する調査特別委員会(百条委員会)は19日、石原慎太郎元都知事(84)の側近で用地買収の交渉役だった浜渦武生元副知事(69)を証人喚問した。最大の焦点だった「水面下の交渉」については「東京ガスから提案があった」と説明。石原氏と同様、豊洲移転は既定路線だったと主張し、20日に行われる「石原喚問」に向けて“腹心”としての役割を果たした形となった。

 休憩を挟み5時間あまりに及んだ証人喚問。浜渦氏は最後に発言を促され「皆さんがそれぞれストーリーを持っているが、私は知っていることしか言えない。百条委はせっかくだからしっかり調べて、この結果をどう生かすか真剣に考えてほしい」と都議を諭した。それは今日行われる「石原喚問」に向けた“露払い”のようにも感じられた。

 豊洲の用地買収経緯を知るキーマンの証人喚問とあって69の傍聴席はほぼ満席。歴代中央卸売市場長4人らが呼ばれた18日から傍聴人は2倍に膨れ、注目度の高さをうかがわせた。

 最大の焦点となったのは、00年10月から01年7月まで東京ガスと進められた「水面下の交渉」だった。この間の記録は公文書として残されていない。浜渦氏は地権者だった東京ガスに「水面下でやりましょう」と打診したとされる交渉経緯について「“水面下”という言葉は、東京ガスの方から提案があった」と説明。「(株主対策などのため)個別に折衝しようという趣旨で、悪い言葉ではない」と主張し、密約などの存在は否定した。

 用地について土壌汚染があるのは承知していたとし「きれいにするのは東ガスの責任。しなければ都は買わないと伝えていた」と強調。01年7月の基本合意後に担当を外れ、その後の汚染対策に関する合意などに関わっていないと訴え「(役人が)勝手なことをしてくれた。不届きな話だ」と吠えた。移転を巡る混乱の責任を問われると「どこに責任があるのか」と声を荒らげて反論した。

 東ガスとの間で難航していた用地取得の交渉役として浜渦氏を指名したのは石原氏。衆院議員時代から秘書を務め、知事当選後に特別秘書を経て副知事に就任した“腹心”に対し「豊洲の交渉は役人には無理だ。おまえがやれ」と命じたという。

 「知事就任時に豊洲移転は既定路線だった」と主張している石原氏同様、浜渦氏も「豊洲しかないからという話はあった」と主張。当時の市場長らの「築地の再整備を含め複数案を提示した」との発言と食い違っており、「石原喚問」の焦点の一つになる。

 ≪「お手紙」使う陰の知事≫浜渦氏は石原氏に長年仕えた側近で、交渉手腕を見込まれて「ハードネゴシエーター」と呼ばれていた。副知事時代は登庁回数の少ない石原氏に代わり、都庁を仕切る“陰の知事”とも言われていた。浜渦氏と直接会える幹部は一部に限られ、職員はA4判1枚の文書で報告、連絡を取るのが慣例だった。「お手紙方式」と呼ばれていたという。05年に都議会に設置された百条委員会で、都議に質問依頼をしたとの追及を否定したことから「偽証」議決を受け、辞任に追い込まれた。
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