【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】COMBINE(コンバイン)という言葉には稲の刈り取りなどに使う農具以外に「合同で何かをする」という意味がある。NBAとNFLには「ドラフト・コンバイン」というイベントが設けられているが、それはドラフト候補の選手たちが一堂に会した合同の身体&運動能力測定会のこと。上位指名が確実な選手はあまり参加しないが、自分のサイズと能力をアピールして「少しでも上位で指名してもらいたい」と願う選手はここにやって来る。そしてNBAのドラフト・コンバインは5月の9日から14日までシカゴで開催。全米から67人が集まって自分自身を売り込んだ。


 当然、背は高いので身長にはあえて目を向けない。実はそれはNBA各チームのスカウトも同じだ。身体面で彼らが注目するのはむしろウイングスパン。両手を横に広げた長さのことだが、日本人なら自分の身長より長ければ自慢話のひとつにできるかもしれない。こっそりと私も計測。身長171センチに対してウイングスパンは174センチあった。「ふっふっふ」と一瞬ニンマリ。しかしNBAドラフト・コンバインの計測結果を見て自分の小ささ、いや“短さ”を知った。

 スカウトをうならせたのはUCLAのフォワード兼センター、イーケイ・アニボーグ(18)のウイングスパン。身長205センチに対し、彼の“両翼”の長さはなんと229センチにまで達していた。これだけの長さがあればバスケットボールではブロックショットの武器になる。身長プラス24センチ。実はNBAで最優秀守備選手に過去2回選ばれているスパーズのカワイ・レナード(25=201センチ)もほぼ同じ長さがあり、守備面では大事な数値なのだ。

 NBAと言えばダンクシュート。宙を舞うその姿をイメージされる方も多いだろう。なので垂直跳びの数値も平均をはるかに超えている。コンバインでは助走なしと、二、三歩の助走をつけて跳ぶ2つのタイプで計測するが、前者で最高値を示したルイビル大のドノバン・ミッチェル(20=191センチ)は93センチをジャンプ。後者の1位は昨季試合には出ていなかったケンタッキー大のハミドゥー・ディアロ(18=196センチ)で113センチだった。少しだけ助走してジャンプすると、すでに高さ305センチにある赤いリングの上に頭が出ている計算になる。

 一方、体脂肪が一番多かったのは北カロライナ大のトニー・ブラドリー(19=206センチ、109キロ)だが、それでも12・0%だった。マイケル・ジョーダンはブルズ時代の全盛期で3%台。俊敏に動くためには体脂肪は邪魔だと思うかもしれないが、有酸素運動となるバスケットボールで体脂肪は貴重なエネルギーでもある。だから試合用の“ガソリン”を積んでいなかったジョーダンは試合直前にさらにもう一食、おなかに詰め込む必要があった。少なければ少ないなりに別の問題を抱えているのである。

 さて今年、1人だけ「神の領域」に達した選手がいた。それがフロリダ大のデビン・ロビンソン(22=201センチ、86キロ)で、スリムな彼を計測したところ、なんと3・2%。重さにしてたった2・8キロの体脂肪しかなかったのである。(皆さん、ぜひ自分の体脂肪の重さを計算してみてください)。

 さて驚くべき数値を示した金の卵たち。しかしドラフトで指名されるのは世界でたった60人(指名は2巡目まで)しかいない。アニボーグとロビンソンはジャンプシュートが下手でNBAレベルには遠く及ばず、ドラフトではせいぜい2巡目指名がいいところなのだとか。ミッチェルとディアロにいたってはNBA下部のDリーグでプレーするのが精いっぱいだと言う。

 「ああ、もったいない」。ここまで読んでいただいた方の多くが最後に私同様、こんな言葉をつぶやくかもしれない。あまりにも層が厚いNBAだからこそ、はじかれてしまうスーパーボディー。世界最高峰のリーグを目指す方はこれをふまえて日々精進してくださいね。 (専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。
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